江戸風鈴(えどふうりん)

「 売り声もなくて買い手の数あるは 音にしられる風鈴の徳 」
江戸の末に、こんな狂歌があったと教えてくれたのは、藍暖簾が清々しい篠原風鈴本舗
の篠原儀冶さん。
御年84歳、現役の風鈴職人だ。 数年前に病で倒れ、以来「最前線あら第一線になりました」
と笑うが、儀冶さんは多くに人が認める、ミスター江戸風鈴だ。
ガラス風鈴の存亡の危機を、知恵と努力で乗り切り、国内のみならず海外にもその存在を
広めた功労者なのである。
さて、先の狂歌だが、この歌から気付かされることがある。
江戸時代、さまざまな物売りが天秤棒を担いで商品を売り歩いた。
多くの物売りは、売り声で客を呼んだが、風鈴売りは、涼やかな風鈴の音がなによりの宣伝、
終始売り声を上げることはなかったという。
では、なぜ”徳”名のか。
「 風鈴はお寺の屋根の四隅にかかっている風鐸(ふうたく)が始まりで、鳴り音が厄除けだった
そうです。 それで、風鈴の音にも魔除けの力があると信じられていたんです。 」
だから、江戸時代は魔除けの色である赤で塗られたものが主流だった。
やがて、ガラスの涼感と音が好まれ夏の風物となったのだ。
( 中 掠)
風鈴の徳は、江戸も今も、霊験あらたかに違いない。
出典 : ひととき (株式会社ウェッジ 発行) 2009年7月号から。
















