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お地蔵様1008.jpg

 「 腹 」という字の右側の部分は器を逆さまにした形で、大きくふくらんでいるという

意味があるそうだ。

白川 静さんの「 字統 」の説明である。

それに月(にくづき)をつけて動物のおなかを示そうと考えた人は、腹はふっくら大きい

のがいいと考えたのだろう。

日本では「 腹が大きい 」、「 腹が太い 」といえば、「 度量がある 」ことを意味するし、

「 腹を肥やす 」といえば「 私利私欲をむさぼる 」ことをいう。

「 腹がふくれる 」といえば、文字通り満腹を指す他、言いたいことを言えずに不快な

さまをも示す。

昔から「 腹 」という言葉を、見た目では分からぬ心の容量や懐具合を示すのに

使ってきた日本人だ。

だからお互いの真意は「 腹を割って 」話さねばわからない。

だが平成の日本では、腹の周囲の大きさで中身を判定するのが習わしとなった。

腹囲が女性90センチ・男性85センチ以上、加えて血圧、血糖、血中脂質のうち二つ

異常が重なるとメタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)と判定されるメタボ

健診である。

しかし、一昨年春から始まって、世の中高年を震撼させたこの腹囲測定の効果に

疑問符が突きつけられたという。

もともと心血管疾患の発病防止を目的とする腹囲測定だ。

だが厚生労働省が先週公表した3万人以上のデータによると、現在の腹囲の基準

数値による線引きにあまり意味のないことが判明した。

健診開始当初からの疑問がさらにふくらんだ。

とはいえ腹囲が増すほど発病の割合が高まる傾向は明らかだから、ここは「 腹の

太さ 」をたたえた昔の人をしたり顔で称賛もできない。

古人から学ぶべきは、人の「 腹の内 」ばかりはなかなか巻尺一つででは分からない

ということか。

毎日新聞 2010年2月16日 余録 から。

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