木材の"水中乾燥"

温度を上げる、風邪をあてる、天日にさらす。
モノを乾燥するやり方はいろいろある。
乾かすためにわざと水につけたり、温度を低くしたりと、一見理屈に合わないようでいて、
実は理にかなう手法もある。
乾燥の世界には不思議がいっぱい詰まっている。
山あいの小さなため池に、約500本の丸太が静かに浮かんでいる。
近づくと丸太の切り口にはヌメヌメした液体が見える。
「 樹液がよう出とるは 」。 宮内建築の宮内寿和さんは切り口を見ながらつぶやいた。
忍者で有名な滋賀県甲賀市の山奥。
池に浮かぶ丸太のほとんどは特産のヒノキだ。
家2軒分の住宅に使う構造材として「 水中乾燥 」をしている。
伐採したての木は多くの水分を含んでいる。
木は乾くにつれて縮む性質があり、住宅や家具に使うには水分量が安定するまで乾かす
必要がある。
現在日本では高温の乾燥機の中に入れて短期間で乾かす方法が圧倒的に多い。
水中乾燥の場合、1年ほど水につけてから引き揚げて、半年から1年置いておく。
伊勢神宮で今も続いている伝統の手法だ。
なぜわざわざ水につけるのか。
職業能力開発総合大学校東京校の定成政憲教授は、
「 いったん水をすわせることで樹液をはき出させる。
そうすると池から引き揚げたときに内部の水が早く均一に抜ける。 」
と解説する。
屋外に放置する一般的な天然乾燥の場合、表面が割れてしまうことがある。
高温乾燥は表面だけ乾いて内部に水分が残ることもある。
一方、水中乾燥は手間はかかるが、ムラなく乾くので割れにくい。
しかも「 樹木の油分が適度に残り、色、つや、香りのいい木材に仕上がる 」という。
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日本の森林はいま、危機にひんしている。
林野庁によると、国内の森林資源(利用可能な樹木)はこの30年間で倍増した。
一方で森林の面積はわずかだが減っている。
外国材に押されて国産材が売れず、間伐も進まない。
面積は減っているのに樹木が増え、森がかってないほど過密になっている。
密集した森には光が差し込まず、下草が育たない。
保水力が低下した森は、災害を誘発する恐れもある。
国産材が売れない理由は価格だけではない。
乾燥の問題もある。
日本の人工林のほぼ半分を占めるスギは特に乾燥が難しいといわれる。
中心部が乾きにくく、柱などに使うと施行後ゆがんでしまうこともある。
出典 : 日本経済新聞 日経マガジン 2010年2月21日号。
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