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名画、だましのテクニック

金閣寺1013.jpg

眼前の風景を描く絵画は、3次元世界を2次元で見せる「 だまし 」の芸術である。

「 モナ・リザ 」の最大の魅力は謎の微笑とも言われる。

微笑(ほほえ)みの先にある視線の行方も、謎の一つだろう。

「 モナ・リザ 」は、どこから見ても視線があう。

逆にいえば、絵を自の前にしてあちこち逃げ回っても、視線から逃げることはできない。

これは絵画や写真に特有の現象である。

美術館で彫像の視線の行方を観察するとわかるはず。

視線の集中する目の前の1点に立たないと、見られている感じはしない。

ほんの少しずれると、視線は外れる。

彫像の視線に、どこまでもつきまとわれる感じはしない。

そのからくりは人がものを見る仕組みにある。

視線のつきまといは2次元世界に限られるのだ。

絵画に描かれた人間の身体はもともと3次元で、視線を向ける顔も目玉も3次元の

世界にある。

それを強引に2次元に映しこんだのが絵画である。

次元の歪(ひずみ)みによって視線の位置が1点に定まらなくなったのである。

絵画の視線の行く先は曖昧(あいまい)だ。

画家たちは故意に曖昧さを提示し、私たちを惑わせる。

それが名画の魅力といえよう。

出典 : 日本経済新聞 2010年2月15日号 

      中央大学教授 山口真美さんの 「 だましの名画 」から。

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