イスラム教はなぜ豚肉を禁じるのか? ①

古来、世界各地で偏見やタブーにさらされてきた肉は少なくない。
豚肉は、なによりもそれらの筆頭にあげられよう。
アラブやユダヤ世界の西アジアでは、現在でも食用とすることを固く禁じているし、忌み
嫌われている。
ムハンマド(マホメット)による「 コーラン 」第5章の食卓の章には、「 死獣の肉、血、豚肉、
、それからアッラーでない邪神に捧げられたもの、絞め殺された動物、打ち殺された動物、
墜落死した動物、また猛獣の食らったもの ・・・ 」などは食べてはならぬとあり、第6章の
家畜の章にも「 死肉、流れ出た血、豚の肉、-これは全くのけがれものー 」などと禁忌
である点を強調している。
また、ユダヤ教の聖典「旧約聖書」の「レビ記」「申命記」のなかでも、全知全能の主ヤハウェ
(エホバ)は事細かに食肉タブーを命じている。
数ある獣肉のうち合格点を得るには「 ヒズメの分かれたもの、ひづめが二つに切れたもの、
反芻するもの 」という条件をクリアしなければならないが、ブタは「 ひづめが二つに切れて
いるけれども、反芻しない 」という理由で、汚れた獣としてタブーの俎上に上がってしまった。
ではなにゆえにムハンマドやヤハウェは豚食を禁じたのであろうか?
いったいにブタは、人糞を含むあらゆるものをむさぼり食う大食漢で、鈍重なうえに発情期
が21日周期で年中繰り返すといった習性が、不潔で汚らわしいというイメージに結びつく。
ブクブクと醜く肥え太り、スマートさとはほど遠い。 もともとストイックなイスラム教、ユダヤ
教とは相いれない家畜と、早々に烙印を押されてしまったのかもしれない。
事実、現在のイスラム法学者たちの多くは、「 アッラーが豚肉を禁じた第一の理由は、その
いやしい習性と食べ物がきわめて不潔であるというブタの生態そのものにある 」と解釈する
向きが強い。
出典 : 「 食の歴史 」 辻原康夫氏 著 河出書房新社 から。
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