幻の薩摩切子

日本経済新聞 2009年3月19日号 文化欄のガラス工芸史研究家・土屋良雄氏
の「 幻の薩摩切子に光当て 」から。
私も是非3月28日からサントリー美術館で開催される薩摩切子展を拝見したいと
思っています。
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薩摩切子は幕末の薩摩藩主、島津斉興(なりおき)のもとで誕生、息子斉彬(なりあきら)
の時代に花開き、わずか十数年で姿を消した幻のガラス製品だ。
赤や青の色ガラスを被(き)せ、多彩な文様をカットした器は本場欧州の品にも負けない
きらめきを放つが、現存数少なく謎も多い。
私はその輝きに導かれ、研究の道を歩んできた。
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サントリー美術館で最初の薩摩切子展を開催したのは、八十二年。 当時確認できる
薩摩切子は八十件ほどしかなかった。 あれから二十七年、二十八日から同館で再び
開く「 まぼろしの薩摩切子 」展には約百二十件が並ぶ。 うち二十八件が新出。
数々の新発見のおかげだ。
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薩摩切子を見分ける確実な方法の一つは、比重の計測だ。 薩摩は製造過程で鉛を
入れるので、ソーダ系の物質を使うヨーロッパ製品より重い。
文様にも特徴がある。 同じ幕末のガラス製品に江戸切子があるが、薩摩の文様は
はるかに複雑だ。 特に格子文や籠目(かごめ)文の中に魚子(ななこ)文という細かい
カット面を施す技は薩摩切子の大きな特徴だ。
実は今回、薩摩切子が増えたのにはもう一つ理由がある。
従来薩摩切子に含めなかった無色の器を、初めて薩摩に分類したからだ。
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極めつきの新発見は最近、薩摩伝承館が購入した無色の「船形鉢」だ。
箱に斉彬の四女、典姫の所有を示す「宝印」の墨書きがある、と聞いてぴんときた。
サントリー美術館の切子大皿の箱にも同じ印があるのだ。
筆跡を比べるとぴたり一致した。 しかも、大きさはコウモリの船形鉢とほぼ同じ。
私は二つは同じ型に吹きこんで成形された兄弟ではないかと考えている。
さらなる発見がありそうな予感だ。
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